キミと桜を両手に持つ
一樹は凛桜が母親と一緒に写っている写真を手に取って微笑んだ。おそらく彼女が中学生くらいの頃のものだと思う。スノーボードを抱えて母親と嬉しそうに仲良く笑いながら撮った一枚だ。
凛桜の母親は元々東北の出身らしく毎年二人で節約して貯めたお金でスノーボードをしに遊びに行ったらしい。唯一それが二人にとっての贅沢で楽しみ。凛桜は母親と一緒にスノーボードに行った楽しい記憶が今でも沢山あると言っていた。
彼女は厳しかったかもしれないが凛桜にありったけの愛情を注いだ。凛桜のような素晴らしい女性を育て上げた彼女には感謝とそして尊敬の念しかない。
「お義母さん、俺は凛桜をこの世の誰よりも愛しています。どうか彼女を俺にください。必ず幸せにすると誓います」
凛桜をここまで立派に育て上げた彼女を失望させるような事は絶対にあってはならない。彼女は凛桜が誰かに愛され幸せな人生を送ることを願ったはず。彼女の為にも、凛桜の為にも、そして自分自身の為にもこの約束はなんとしてでも守り抜きたい……例えそれが誰かを傷つけることになったとしても、だ。
一樹は手にしていた写真立てをカタンとチェストの上に戻すと、凛桜のいる自分の寝室へと向かった。
部屋に戻ると、凛桜はベッドの上でまだすやすやと寝ている。昨晩もしつこく彼女を抱いてしまったから恐らく疲れているのだろう。
彼女の寝ている側のベッドに腰を下ろすと、優しく彼女の髪をすいた。気持ちよく寝ていた彼女は徐々に覚醒してゆっくりと目を開けた。一樹と目が合うとふふっと微笑んで気持ちよさそうに伸びをしてから再び目を閉じた。