キミと桜を両手に持つ
「花園さん、まさか婚約破棄になるとは思いもしなかったんだろうな。これは俺の予想だけど、あれから三年、彼女も前進したいんだと思う。でもあの性格だから自分でどう前に進んだらいいかわからないんだ。でも藤堂さんとよりを戻せば前に進めると思ってるのかもな。軌道修正ってやつ?神楽坂さんはその手助けをしようと思ってるのかもな。婚約解消させてしまった罪の意識からなのか、それとも彼女のことが未だ好きで君との婚約破棄から一向に立ち直れない彼女を救いたいのか……。あ、それか、ただ単に何でも持ってる藤堂さんの事が大嫌いで君からまた大切なものを奪おうとか壊したりしようと思ってるとか……?昔、給食のパンとか牛乳無理矢理奪ったりして誰か虐めた事ある?」
一樹は思わず前田さんを睨んだ
「だったら余計如月さんをこの件に関わらせるわけにはいかない。アグノスの件は俺が引き受ける」
神楽坂が凛桜を傷つけるような事でもしたら、彼女に指一本でも触れたりしたら……ただそう考えただけでも気が狂いそうになる。
「今藤堂さんが出ていって花園さんや神楽坂と関わってみろ。絶対にややこしい事になる。如月さんを信じてこの仕事が完了するまで待つんだ。彼女は花園さんじゃない。如月さんはしっかりしている。神楽坂に引っかかるような馬鹿じゃない」
「彼女の事は信じてる。信じてないのはあいつだ!」
一樹は思わず声を荒げた。
「彼女なら大丈夫。俺も皐月さんも遠坂もいる。遠坂くん基本的に女よりプログラミングの方が好きそうだしな。てかあいつコード書く以外に好きな事あるのか?いつもすげー嬉しそうに書いてるよな。あ、ほら今もニヤけてる。……まぁあいつなら大丈夫だろ」
前田さんはパタンとPCを閉じてすくっと立ち上がった。でもドアを開けようして急に立ち止まると一樹を振り返った。