キミと桜を両手に持つ

 「初めまして、蓮です。いつも君のことは詩乃から聞いてるよ」

 「初めまして、凛桜です。この度は婚約おめでとうございます!」

 凛桜は満面の笑みで蓮と握手を交わした。

 詩乃と蓮は二週間前に婚約した。蓮は一樹との長年の知り合いだが最も信頼している友人の一人だ。そんな彼と詩乃が結婚することを心から嬉しく思う。

 婚約という言葉を聞いて一樹は凛桜との結婚について考える。3年前にも同じ人生の分岐点に立った事があるが、あの時の婚約は花園さんに自信を持たせる為に行った名ばかりのようなものだった。正直な話、彼女との結婚はいつになるのか、どんなものになるのか将来が全く見えなかった。

 でも凛桜との婚約を考えると二人の未来へと大きく前進する実感がある。凛桜との結婚を考えると一樹に大きな夢と希望を与えてくれる。



 「すごくいい子じゃないか」

 試合後、詩乃やバスケ仲間に囲まれて楽しそうに話している凛桜を見つめていると、いつの間にか隣にやってきた蓮がそう呟いた。

 「婚約おめでとう」

 一樹は隣で同じように詩乃を眺めている蓮にもう一度祝いの言葉を述べた。今日はこの後、皆で二人のお祝いをすることになっている。

 「ありがとう。結婚式にはお前をグルームズマンに任命してやるよ。詩乃は如月さんをブライズメイドにするってはりきってたから」

 一樹はククっと笑った。

 「一体何人のグルームズマンをつけるつもりなんだよ」

 「8人かな。俺の兄弟と詩乃の兄弟、それと友人三人とお前」

 「ははっ、一体どこのセレブだよ」
 
 蓮はこう見えても家族が代々で大きなグループ会社を経営している御曹司だ。実は蓮だけでなくこのバスケチームのメンバーは一樹が小さい頃から家族同士で付き合いのある会社経営者や政治家、投資家などの子息ばかりだ。
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