キミと桜を両手に持つ

 ほわぁ──…。すっごい家!

 生まれて初めて見る大豪邸に驚きと興奮、そして彼の家族と会うことに緊張度はマックスに。今にも飛び出そうな心臓を押さえながら玄関の前に立つ。すると突然ドアが大きく開いた。

 「一樹!ずいぶん早かったわね。久しぶり。元気にしてた?」
 「ああ、元気にしてる。母さんは最近調子どう?」

 とても上品で70近いとは思えないほど綺麗な女性が藤堂さんを温かく出迎えた。彼女の足元には3、4歳くらいの可愛い子供達が何人かいて物珍しそうに私を見ている。その中には金髪に近い茶髪で澄んだブルーの目をした女の子と男の子もいる。

 「凛桜さん、はじめまして。母の清花(きよか)です。お会いできて本当に嬉しいわ。一樹ったらなかなかあなたに会わせてくれないのよ。今日は皆あなたに会えるのをすごく楽しみにしているの」

 藤堂さんのお母さん、清花さんは私に温かい笑みを向けた。思わず私も彼女につられ大きな笑みを返す。

 「はじめまして。如月凛桜です。今日はお招きいただきありがとうございます」

 清花さんは手を伸ばすと私の手を握った。

 「暑かったでしょう?さ、早く中に入って」


 藤堂さんと一緒に中に足を踏み入れると目の前に三階まで吹き抜けの大きなリビングルームが広がっている。天井まである大きなガラス窓からは海が一望できる素晴らしい眺めになっていて、そのあまりの美しさに息をのむ。

 リビングルームでは彼の家族がいくつも置かれた大きなソファーに座ってテレビを見ながらなにか飲んだり食べたりしている。20人近くいるのに部屋が大きいので窮屈さを全く感じない。まるでどこかのホテルのロビーのよう。

 「あ、一樹叔父さんだぁ!」

 可愛い7歳くらいの女の子が彼に走り寄って抱きついた。

 「(つむぎ)、大きくなったなぁ」

 藤堂さんは嬉しそうに紬ちゃんを抱き上げた。紬ちゃんはきゃっきゃっと大喜びで彼の首に抱きつく。
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