キミと桜を両手に持つ
「凛桜さん、うるさくてごめんなさいね。今度は都内のマンションに一樹と一緒に遊びに来てね。そしたらもう少し落ち着いてお話しできると思うの」
隣に座っていた藤堂さんのお母さんは、孫や子供たちがワイワイ話しているのを見て少し申し訳なさそうにした。
「いえ、こうして賑やかに食事するのは私の憧れだったんです。とても楽しいです」
私が心からそう伝えると清花さんは私に向き直った。
「一樹から色々と凛桜さんのお母さんのお話を聞いたわ。お母さん、あなたの事本当に心残りだったでしょうね。私も子供を持つ親だからその気持ちが痛いほどよくわかるの。凛桜さん、もうここは貴方の家だと思っていつでも遊びにいらっしゃいね」
彼女の心温まる言葉に思わず涙ぐみそうになる。藤堂さんもそして彼の家族も私にこうして居場所を与えてくれる。
「ありがとうございます。是非今度一樹さんと一緒にお伺いします」
私は彼女に微笑んだ。
食事の後外が少し涼しくなった頃、藤堂さんは私を庭に呼んだ。
「凛桜、こっちに来てごらん」
藤堂さんに促され外に出ると広い庭の奥の方にウッドデッキがあって、その上に大きなドーム型のテントが設置されている。その手前には焚き火台があってパチパチと火が燃えている。それを見た私は思わず歓喜の声を上げた。
「一樹さん、テントがある!」
急いで駆け寄ってテントの中に入ってみる。テントの外は装飾用のLEDライトでまるでクリスマスツリーのように飾り付けがしてある。テント内はLEDランタンがあちこちに置かれとても明るい。すでに簡易のテーブル、椅子などが置かれてあってキャンプの雰囲気抜群になっている。