キミと桜を両手に持つ
「すごく素敵!」
大喜びしている私を見て藤堂さんは私を抱きしめると頭にキスを落とした。
「本物のキャンプじゃないけど雰囲気は十分味わえると思う。いつか必ず本物のキャンプに連れていくから」
「これ一樹さんが設置してくれたんですか?」
感動しながらまるでグランピング場で見るような大きなドーム型のテントを見た。
「流石に俺一人では無理だから、業者に頼んで組み立ててもらった。気に入った?」
「すごく素敵です。一樹さん、ありがとう」
以前私が何気なしに言った言葉を覚えててくれて、わざわざ私の為にテントを用意してくれた……。彼のそんな気持ちが嬉しくて目の奥がじわりと熱くなる。
「あー、キャンプだー」
「テント、テント!!」
子供達が一斉に私達の方へ駆け寄ってくる。
「ほら、スモアの材料」
子供達と一緒にやってきた泰斗さんは焚き火台の側にあるテーブルにマシュマロやグラハムクラッカー、チョコレートと共に長い串を置いた。
「スモア作るー!!」
子供達はどうするのかすでに心得ていてマシュマロを串で刺して焚き火にかざした。
「ほら、凛桜も作ってみる?」
藤堂さんが串に刺したマシュマロを私に手渡してくれて、それを子供達と一緒に見よう見まねで炙ってみる。マシュマロが茶色に色付いていい感じになった頃、彼はクラッカーの間にチョコレートと炙ってふわふわになったマシュマロを挟んで私に手渡した。
子供達と一緒にスモアにかぶりつくとふわふわのマシュマロと熱でとろりと溶けたチョコレート、そしてサクッとしたグラハムクラッカーが口の中いっぱいに広がる。
「美味し〜い!」
「キャンプで食べるおやつの一つだな」
大喜びして食べている私を見てクツクツ笑うと、藤堂さんもマシュマロを火で炙ってスモアを作ってかぶりついた。