キミと桜を両手に持つ
皆でしばらくテントの前でスモアを作ったり花火をして遊んでいると、突然紬ちゃんがやって来て私の服の袖を引っ張った。
「なぁに?」
私が尋ねると、紬ちゃんは可愛い声でとんでもない質問をしてきた。
「ねぇねぇ、一樹叔父さんといつ結婚するの?」
「え……」
慌てて周りを見るけどこの会話を聞いている人は誰もいない。
藤堂さんとは結婚どころかまだ付き合ったばかり。子供っていきなりすごい直球を投げてくるなぁと思って顔を赤くしながら紬ちゃんに小さく囁いた。
「う、うん。一樹叔父さんと相談してみるね」
「明日までにわかる?」
「あ、明日!?」
彼女の質問に更に困ってなんて答えようかと迷っていると紬ちゃんは不安そうに私を見た。
「あのね、紬、明日は藤澤のおばあちゃんのお家に行くの。また今度一緒に遊べる?」
そっかぁ。明日は美咲さんのご実家の方に行っちゃうんだ……。
藤堂家の子供達は皆いい子たちばかり。大人とも物怖じせずはきはきと喋るし、「ありがとう」の感謝の気持ちを誰にでもきちんと伝える。
泰斗さんの息子、玲央くんと羅衣くんはそれぞれ中学生と高校生。でも大人顔負けのしっかりした意見を持っていて、小さなイトコたちの面倒も率先して見ている。
そんな藤堂家の子供達と今度はいつ会えるのかと思うと私も少し寂しくなってくる。ふと顔を上げると、皆が楽しく家族で過ごしている光景が目に入る。
一樹さんは焚き火の前で泰斗さんや渉さん達男性陣と集まって何か冗談を言いながら笑っている。子供達は走り回ったりテントの中でキャンプごっこして遊んでいる。女性達はそれぞれ子供の面倒を見ながら飲み物を飲んだり楽しくおしゃべりしている。
──賑やかで温かい家庭──…
私が小さい頃から願ってやまなかった夢が今すぐ目の前にある。私はしばしその光景をじっと見つめた後、屈んで隣にいる紬ちゃんと視線を合わせた。