キミと桜を両手に持つ

 誕生日がとても楽しみになってきてワクワクする。母が病気になってからは誰にも祝ってもらった事がなかったので、こうして誰かに誕生日を祝ってもらえるのは実に10年ぶり。

 藤堂さんは喜んでいる私を優しく見つめると腕に力を入れて強く抱きしめた。

 「凛桜、愛してる」

 彼が愛情のこもった優しい声で私に囁く。幸福に包まれて満面の笑みを浮かべると、私は彼を見上げた。

 「私も一樹さんを愛してる」

 彼の嬉しそうな顔がゆっくりと近づいてきて、そっと口付けされる。でも軽くするはずのキスが急に熱を帯びてきて、彼はいきなり私を壁に押し付けた。

 「んんっ……」

 どこでスイッチが入ったのか、ここがオフィスだという事をすっかり忘れて彼の手が私の服の中に忍び込む。

 「あっ……あんっ……! い、一樹さん、ちょっと待って……!」

 再び唇を塞がれ舌を絡めながらキスしてくる彼をなんとか宥めようとしていると、突然会議室のドアが開いた。

 「わわわっ……! ご、ごめん!!」

 と言ってバンっと扉が勢いよく閉められる。

 一気に我に返った私は青ざめながら恐る恐るドアを開けると藤堂さんと二人で会議室の外を覗いた。

 「し、紫月さん!?」

 そこには顔を真っ赤にして両手で顔を覆っている彼女が立っている。

 「ご、ごめん!この会議室誰も来ないからよく昼寝に使うんだけど、まさか如月さん達がいるとは知らなくって……」

 そう言いながらも、彼女は興味津々で私と藤堂さんを見る。

 「堅物イケメン上司とクールビューティーかぁ……。どこかの恋愛漫画みたいでいいなぁ〜」

 そう羨ましそうに言われて思わず顔がかぁっと赤くなる。

 「神崎さんもめちゃかっこいい彼と婚約してるし。あ〜私も溺愛してくれる彼氏欲しい!」
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