キミと桜を両手に持つ

 先日は花梨ちゃんとご飯を食べているといきなり向かい側に座ったかと思うとテーブルの下で脚を組むふりして私の前脛部を思いっきり蹴ってきた。今その部分は大きな青あざになっている。

 花梨ちゃんも最近佐伯くんと付き合っている事が公になって高橋さんの取り巻きの女の子達に色々と悪口言われたり意地悪されている。なので彼女を庇っている私に腹いせに意地悪しているのかと思っていたけど、どうやら私が藤堂さんと付き合っている事で嫌がらせしているらしい。

 「えっ?高橋ってあいつか……。凛桜、嫌がらせされてるのか?」

 紫月さんの話を聞いて、急に藤堂さんは心配そうに私を見た。彼は仕事が忙しい上に私がアグノスに行く事でとても神経質になっている。これ以上彼に心配をかけたくなくて私は首を横に振った。

 「ううん、特に何も。大丈夫ですよ」

 ニコリと微笑むと藤堂さんは眉間に皺を寄せてじっと私を見た。

 「じゃ、私行くからお二人でごゆっくり。さっきので一気に目が覚めちゃったし」

 ふふっと笑うと紫月さんは「あ〜私も心配してくれる彼氏ほしい〜」と言いながら去っていった。

 「俺ももう戻らないと」

 藤堂さんは再び会議に戻らなければならない事にうんざりしながら溜息をついた。

 「なるべく早く帰るようにするけど、多分今夜は本社の人達と一緒に食事に行かないといけないかもしれない」

 彼は申し訳なさそうに私を見た。おそらく今日から三日はこんな感じだろうと思っていたので大して驚きはしない。

 「わかりました。じゃ先に帰って待ってますね」

 「凛桜、会議中で忙しくても必ずメッセージはチェックしてる。アグノスの撮影が終わって無事に家についたら連絡してくれ」

 藤堂さんは心配そうにしばし私を見つめた後、再び会議へと戻って行った。
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