キミと桜を両手に持つ
それを聞いて高橋さん達の事を思い出す。彼女も同じように言われていたのかもしれない。
「周りの意見に振り回されていつも辛そうにしてた。だからあの夜彼女が俺に泣きついてきた時、だったら壊してやろうって思った。どうせあいつと付き合うなんて最初から無理だったんだ。他人に自分を否定されるような事を言われ続けるのは誰にとっても辛い。でも特に彼女のような人間にとってはもっと辛い」
あまりのショックでなんと言っていいのかわからなくて言葉を失ってしまう。
「あ、あの、どうしてこの話を私に……」
「……どうしてだと思う?」
彼は手にしていたウィスキーを一気に飲み干すと、グラスをカタンとカウンターに置いて私に手を伸ばしてきた。
「君は花園さんと違って強くて綺麗だ。君が彼と街で歩いているのを見た時に興味を持った」
そう言って私の髪を一房指で摘むとそれをクルクルと指に絡めた。
「あいつは俺と違って何もかも持っている。いい家に生まれていい家族にも恵まれてなんの苦労もしてなさそうで……。親に捨てられて孤児院で育った俺とは雲泥の差だな。結局俺はあいつの大切にしてるものをただ奪ってしまいたいだけなのかもな」
そう言って私を見つめる彼の目はどこか冷めていて何にも期待しないような目をしている。まるで前田さんと同じ初めから何かを諦めているようなそんな感じ……。
「神楽坂さん、もしかして花園さんの事が本当に好きで──…」
そう言いかけた途端、彼は声を上げて笑い出した。
「彼女は俺を選ばない。生まれも素性もどこの誰ともわからないような男を彼女の家族が認めるわけがない」
彼は私の髪をそっと引っ張って彼の方に引き寄せた。