キミと桜を両手に持つ

 「凛桜、大丈夫か!?あいつに何かされなかったか!?」

 神楽坂さんが去った途端、藤堂さんは私の顔や頭を撫でながら心配そうに覗き込んだ。

 「大丈夫です。何もされてません。本当にごめんなさい、心配をかけさせてしまって……」

 しゅんとして謝ると彼は私を抱きしめた。

 「君が位置情報をシェアしてくれてたおかげで大体の位置はわかってたんだけど、この辺は雑居ビルが立ち並んでて店も多くて正確な場所がなかなか特定出来なかったんだ。遅くなってごめん」

 彼は店の客がジロジロと見ているにも関わらず私を抱きしめて何度も体をさすった。彼は遅くなったと言っているけどあのビジネスホテルでメッセージを送ってからそんなに時間は経ってない。会社からここまで来るのにそれなりに時間がかかったはずだ。

 「思ったよりも早かったのでびっくりしました」

 そう答えると彼は突然何かを思い出したようにスマホを取り出した。

 「すっかり忘れてた。実は遠坂が皐月さんを駅まで見送った後、一人で反対方向に歩いて行った君が気になって引き返したんだ。そしたら花園さんと神楽坂と一緒に歩いてる君を見つけて慌てて後を追ったけど見失ったって俺に連絡が来たんだ。それで慌ててこっちに向かってて君のメッセージを見逃した。遠坂も凛桜を探すのを一緒に手伝ってくれたんだ。この辺りはラブホも多いから今ホテルを一軒ずつまわってくれてる」

 そう言ってから遠坂くんに電話をかける。

 「今見つかった。ありがとう。この借りは必ず返す」

 遠坂くん、あの後戻ってきてくれたんだ……。彼が機転を利かせて藤堂さんに連絡してくれたことに心の中で感謝を述べる。明日会社で迷惑かけた事をお詫びしてこの借りを必ず彼に返したい。

 藤堂さんは電話を切ると私のバッグを拾って肩を抱いた。

 「一緒に家に帰ろう」
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