キミと桜を両手に持つ
マンションに帰ってくると藤堂さんは私を抱えてバスルームへと直行した。
「風呂に入るぞ」
そう言って服を着たまま浴室に入ると私を床にそっと下ろした。勢いよくノズルから水が出てきて着ていたスーツがあっという間に濡れてしまう。
「待って、服が……」
「いいんだ。あいつが触れた所全部洗うから」
彼は濡れて肌にベッタリと貼り付いた私の服や自分の服を黙ったまま次々と剥ぎ取っていく。彼は帰りのタクシーの中でも口数少なくて何か色々と考えているのが分かる。
見上げると彼の濡れた髪からは大粒の雫が滴ってきてその綺麗な顔を次々と濡らしていく。相変わらず表情は硬くて、真剣な顔で黙々と私の髪や体を洗っている。そんな彼が少し心配になってきてそっと頬に手で触れた。
「一樹さん、ありがとう」
色々な意味を込めて感謝を述べると、彼はその真剣な眼差しで私を射抜いた。
「凛桜、君は俺が必ず助けに来ると信じて位置情報を共有したんだ。もちろんどんな事があっても、例えどんな困難にぶち当たっても必ず君を見つけて助け出した。俺をずっと信じて待ってたんだよな」
コクンと頷くと彼は私を強く抱きしめた。
「俺も凛桜のことは誰よりも信じてる」
彼に抱かれながら今夜の神楽坂さんとの出来事を色々と思い出す。
私と藤堂さんの前にもこれから色々な障害が待ち構えているに違いない。でもそれを一つ一つ乗り越えていく強さがなければ私も花園さんのように彼を永遠に失ってしまう。
今までは母に言われたように一人でも生きていけるよう強くなろうと頑張ってきた。でもこれからは彼と一緒に生きていけるように、彼を失わないように強くなりたいと切実に思う。