キミと桜を両手に持つ
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それから数日後の土曜日、夕食の食材を買いに家を出た私はマンションの前をキョロキョロと何かを探しながら通り過ぎようとしている花園さんと出くわした。
「き、如月さん!?」
「花園さん!?」
驚いていると、彼女は私の方にやってきた。
「あの、先日は本当に申し訳ありませんでした。神楽坂から如月さんにホテルまで運んでいただいたと聞きました。本当にご迷惑をおかけしました」
彼女は深々と頭を下げた。
「あの、あれから一人で大丈夫でしたか?その、私と神楽坂さんはあの後部屋を出てしまったので……」
「大丈夫です……。あれから夜中に目が覚めて、神楽坂さんからメッセージがきてていろいろ怒られました。本当にすみませんでした」
「大丈夫だったら良かったです」
花園さんはもう一度私に頭を下げた後、顔を上げて私が出てきたマンションを見上げた。
「あの、花園さんはこの近所になにか用事でも……?」
私と後ろにあるマンションを何度も見ている彼女に思わず尋ねた。
「その、実はこの辺に住んでるんじゃないかって教えてもらって……」
「え……?」
「……如月さん、私、聞きたいことが……」
と言った後しばし俯いてから再び私を見た。
「如月さんのお付き合いしている男性ってもしかして……」
彼女の聞きたいことがわかって正直に答えた。
「藤堂さんです」
「そ、そうですよね……。そうかなってずっと思ってました。実はお二人が一緒に買い物してるのを見かけた事があって」
彼女の目がじわりと涙で潤んできてゴシゴシと目を擦った。
「あの、もし彼に会いにきたのなら、今ちょうど外出中でしばらく戻ってこないんです」
藤堂さんは私の誕生日に合わせて何か用意するものがあると言って1時間前に家を出た。夕食までに戻ると言っていたけど何時に帰ってくるかわからない。
「そうですか……」
そう言ったものの、彼女はそこに立ち尽くしたままで、どうしていいのかわからないのか途方に暮れている。