キミと桜を両手に持つ
「あの、すぐ近くにカフェというかコーヒーショップがあるんです。一緒にコーヒーでも飲みますか?」
先日神楽坂さんが彼女が藤堂さんに会って何か話したがっていると言っていた事を思い出す。一体彼に何を話したいんだろう……?
「はい、是非」
と彼女が答えたので、一緒に歩いて近くのコーヒーショップへと向かった。
店内に入ると、私はソイラテを、彼女はカプチーノをそれぞれ頼んで店の奥にある小さな丸テーブルに座る。なんと話し出そうかとラテを飲みながら糸口を探っていると突然彼女が口を開いた。
「藤堂さんから私の話を聞いたことはありますか?」
「はい……」
「酷い女だって思いますよね」
何と答えたらいいのかわからなくて黙ったまま彼女を見つめる。
「私、仕事もできないし、美人でもないし、どうして藤堂さんみたいな完璧な人が私の事を好きなんだろうってずっと思ってました」
彼女はテーブルの上に置いた手をギュッと握りしめた。
「彼はいつもモデルみたいな綺麗な人から告白されてて、いつも不安で……。だからもっと好きだって言われて安心したくて彼の家に突然押しかけて迷惑かけたり。やっぱり私なんかじゃなくてもっと似合う人に彼が心変わりするんじゃないかと思うと不安で押しつぶされそうになったり、寂しくなったり……」
再び彼女の目に涙が溢れてくる。
「あの時、寂しさや辛さを埋める為に思わず他の男性にすがった事は今でも凄く後悔してます。できればもう一度彼に謝りたい。許されるならもう一度彼とやり直したい……」
彼女は俯いて肩を震わせた。本当は彼女も何もかも手遅れだということはわかっているに違いない。でも後悔からなのかそれともどうやって前に進んだらいいのかわからないのか彼女は今も過去に囚われたままで、もしかすると自分でもどうしたらそこから抜け出せるのかわからないのかもしれない。