キミと桜を両手に持つ

 まるで小型のバスの様な車を運転して藤堂さんは再び高速に乗って車を一時間半程走らせた。インターを降りて更に山側へと20分程走ると今日泊まるキャンプ場に到着した。

 山に囲まれた緑多いとても綺麗な場所で、近くには渓流が流れていてキャンプ場の中にある木々も紅葉で美しく染まっている。

 チェックインを済ませて指定のオートキャンプ用のサイトへ向かうと、どれもそれぞれ木々や段差で区切られていてとてもプライベート。今は11月下旬ということでキャンプシーズンがほぼ終わりかけているからか、私たちのサイトの両隣は誰もいなくてとても静か。でも夏場はきっと大勢の人で賑わっているに違いない。

 「すごく綺麗なところ!この場所どうやって見つけたんですか?」

 「実は子供の頃家族と一緒にここに来たことがあるんだ。泰斗の家族も何度かここに子供達を連れて遊びに来たことがある」

 ……藤堂さんの家族の思い出が詰まった場所……。そんな場所へ私を連れてきてくれたのかと思うとなんだか胸がじんと熱くなる。

 このキャンプ場はテントキャンプもオートキャンプもできる他、丘の上の方にはキャビンもある。お店もあるし、シャワーやお風呂もあるし、調理する場所や子供達が水遊びできる所など他にもいろいろな施設が充実している。このキャンプ場には無いけど、15分ほど運転すれば温泉もいくつかあるらしい。きっと子供達には色々と遊べる楽しいキャンプ場に違いない。

 車を停めて暫し二人でお茶を飲んだりベッドに寝転がったりして景色を見ながら休んだ後、藤堂さんはキャンプ場内にある釣り堀に私を連れてきた。

 「今の時期は魚がなかなか釣れないから、もっと暖かくなった春にでも釣りに行こう。でも釣り堀は練習するにはちょうどいいから」
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