キミと桜を両手に持つ
藤堂さんの話ではこの時期釣れる魚もあるみたいだけど初心者の私にはなかなか難しいらしい。釣り堀にはすでに魚がストックされていて実際に泳いでいるのがみえる。とりあえずキャンプ場で借りた竿に藤堂さんに教えられた様に餌をつけて仕掛けを池の奥へと投げる。するとあまり待つこともなく竿がしなり魚が餌に引っかかった。
「一樹さん見て!」
釣り堀とはいえ初めての釣りで初めて釣れたことに興奮してしまう。必死になって魚を釣り上げている私を見て彼は楽しそうにクツクツと笑った。その後も同じ様にして魚をもう一匹釣り上げると、藤堂さんに焼き場まで持って行ってもらい塩焼きにして食べてみる。
その後まだ日が明るいうちに周辺を散策してみようということで、藤堂さんと一緒に渓流沿いを歩いてハイキングしたりキャンプ場の施設を見てまわったりして過ごした。山の中だからか空気が冷たくピンと張り詰めて澄んでいてとても気持ちいい。彼と一緒に手を繋いでゆっくりと美しい景色の中を日没まで歩いた。
その夜、私と藤堂さんは二人用の大きな寝袋をベッドに敷いてそれに一緒に包まった。最初暖房を入れていたけど彼は体温が高いのか寝袋の中で抱かれていると十分暖かい。暖房を切って照明も切ると二人で寝ながら窓から見える空を眺めた。彼の腕の中で今日一日の楽しかった出来事を思い浮かべる。
「夕飯、初めて焚き火で作ったにしては上手に出来てましたよね」
晩御飯はダッチオーブンとキャンプ用のライスクッカーを使ってビーフシチューとご飯を作った。シチューはそんなに心配はしなかったけどご飯が上手く炊けるかすごく心配していた。でも予めネットで炊き方を調べていたからか失敗もなく藤堂さんも喜んで食べてくれた。
「うん、美味かったよ」
彼は私を後ろから抱きしめると首筋に唇を這わせた。スプーンのように重なって寝袋の中で抱かれているけど、彼は先ほどから私の服の中に手を忍ばせたり首筋にキスをしてきたり耳に甘噛みしてきたりといろいろと悪戯を仕掛けてくる。