キミと桜を両手に持つ
「一樹さん、くすぐったいです」
振り向いて彼を止めようとするとすぐに唇を重ねてきた。先ほどから彼が私を欲しがっているのはわかるけど、流石にキャンピングカーの中でできるわけがない。
「……激しくしない。ゆっくり優しくするから……」
誘惑するように低い艶のある声でささやかれて心臓がドキドキしてくる。こんな風に色気ダダ漏れで囁かれるとどこまで彼を拒めるか自分でも自信がなくなってくる。
「本当にダメです」
「……凛桜、末っ子って甘えん坊だって知ってるか?」
そう言って甘えるように首筋にキスをしながらスルリと私の下着の中に手を忍び込ませた。そんな彼の手を慌てて掴んだ。
「あんっ……!や、ほ、本当にここではダメなの。明日だったら、家に帰ったらいくらでもいいから──…」
そう言うと彼はまるで駄々をこねるように強めに肩を甘噛みした。
「っ……!もう、痛いじゃないですか!」
本当はそんなに痛くないけど噛まれたところをさすりながらふざけて怒ったふりをする。彼はクツクツ笑うと再び私を抱きしめた。
「明日、覚えてろよ。いくらでも抱いていいんだよな」
顔を真っ赤にしながら頷くと彼はギュッと私を抱きしめて震える息を吐きだした。
「一樹さん、キャンプに連れてきてくれてありがとう。今までもらったどのプレゼントよりも嬉しかったです。こんなに素敵な日は一生忘れません」
人生初めてのキャンプが彼と一緒だったことがとても嬉しい。できればこれからの長い人生何度もこの車で彼と一緒にキャンプに行きたい……。
寝袋の中でゴソゴソと向きを変えると彼に擦り寄った。彼はいつも大きくて優しくてこんな寒い夜だって春のように暖かい。
「凛桜、愛してるよ」
彼は私の額にキスを落とすとしっかりと抱き寄せた。「私も…」と微笑むと彼の逞しい腕の中でゆっくりと目を閉じた。