キミと桜を両手に持つ
次の朝、目が覚めてトイレに行ってから戻る途中ちょうど近くのキャンプサイトで私達と同じようにキャンピングカーでキャンプをしている女性と出会った。彼女は50代後半くらいの女性で昨日ご主人と一緒に来ているのをチラリと見かけた。
「おはようございます」
と声をかけると彼女は顔を上げた。犬を朝の散歩に連れて行っていたのか彼女の隣には可愛い小型犬がいる。
「おはようございます。ここ良い所ね。私達は初めて来たんだけど貴方達も初めて?」
彼女は朝靄に包まれている紅葉で綺麗に染まったキャンプ場を見回した。
「はい。実はこうしてキャンピングカーでキャンプするのも初めてなんです」
「あら、初めてなのね。ふふっ、新婚さんかしら」
そう言われてかぁっと赤くなるけど何故か思わず「はい」と答えた。
「とてもいいご主人ね、あなたを連れて一緒にキャンプに来るなんて。同じ趣味があるって良いわよね」
彼女はうんうんと頷いた。
「あの、よくキャンピングカーでキャンプされるんですか?」
私は年季の入った彼女のキャンピングカーを見た。
「そうなの。子供ももう大きくなって巣立ったし、今は主人とこの犬だけなの。夫婦二人でこうしてのんびり全国を旅しているの」
夫婦で全国を旅かぁ……。仲のいい夫婦なんだなと思う。私と藤堂さんの間にも彼女たちのような未来があるのかな……。
彼女としばらく雑談して犬を撫でて遊んだ後、キャンピングカーに戻ると藤堂さんが朝食を用意してくれていた。冷蔵庫にあったおにぎりやソーセージ、卵焼きを電子レンジで温めたものの他に小さなパンケーキを何枚か焼いていてケーキのように積み重ねてフルーツが散りばめてある。
「ハッピーバースデー、凛桜」
「一樹さん、ありがとう!」
ケーキは今晩家に帰ったら一緒にお祝いしながら食べることになっているけど、でもこうして早速お祝いしてくれた彼に嬉しくて抱きつく。