キミと桜を両手に持つ
「本当にありがとうございます!あの、藤堂さんには極力迷惑をかけないようにします。私、お料理も家事も得意なので何でも任せてください!」
ここに住まわせてもらえるなら迷惑をかけないように頑張らなきゃ。そう力強く宣言すると、彼はクスッと笑った。
「それは頼もしいな。じゃあ、無理はしない程度でお願いするよ。俺もできることはするから分担しよう」
彼はリビングの方へ歩いていくので私も後について歩いていく。今まで広すぎるくらいに思っていたこの部屋が彼がいることで丁度良い広さになる。
ドアフレームも彼の高身長だと頭をぶつけてしまうかなとついつい見てしまう。ここはドアも天井も高いので大丈夫そうだけど、古い日本家屋だと絶対にぶつけちゃうだろうなと思ってふふっと口元に笑みを浮かべる。
それにしても本当に背が高いなぁ。ドアフレームの高さから見て190センチはないけど188センチくらいはあるのかな……?
藤堂さんはリビングのまだ閉まっているカーテンをザッと開けた。朝の柔らかい光が入ってきてこの部屋と私達をあたたかく照らす。彼は何か少し考えるように外をしばし見た後、ゆっくりと部屋の中を振り返った。
「あの、お疲れですよね。お茶か何か飲まれますか?それとも朝食はいかがですか?ちょうど今から食べようと思っていたところだったのですぐに作ります」
「ありがとう。でも先にシャワーを浴びたいんだけどいいかな」
彼は手に持っていたバッグをどさりと床に置くとふぅっと溜息をつきながら前髪にかかる髪を右手でかき上げた。そんな気怠い何気ない仕草なのに男の色気がダダ漏れでドキドキする。
「も、もちろんです!ではその間に朝食を作りますね。なにかご希望はありますか?」
「うん、……そうだな。しばらく日本の朝食を食べてないから日本食がいいな」