キミと桜を両手に持つ

 出来た朝食をテーブルに並べていると彼がすっきりした顔でバスルームから出て来た。

 「もう出来たの?随分手際がいいんだね」

 彼はテーブルに既に用意された朝食を少し驚いたように見た。手際がいいと言われたらそうなのかもしれないけど結局手の凝ったものじゃない。彼のような大男が食べる朝食にしては質素で物足りないかもしれない。

 「実はあまり食材がなくて……。作りますって言ったもののこんなものしか用意できなくてすみません。今日お買い物に行くのでなにか食べたいものがあれば教えてください」

 彼はテーブルに並んだ朝食を見ると「そんな事はないよ」と首を横に振った。

 「十分すぎるくらいの朝ごはんだよ。とても美味そうだ。もし買い物に行くなら俺も一緒にいくよ。荷物持つの大変だろう」

 「いえいえ、とんでもないです。一人でも全然大丈夫です。お疲れでしょうから是非休んでください」

 わたしが焦って首を振ると

 「そんなに疲れてないから大丈夫。それに今寝てしまうと時差ボケが治らなくなってしまうんだ」

 と言ってダイニングテーブルの椅子に腰掛けた。彼が席に着いたのを見て私も向かい側の椅子に腰を下ろした。

 「どうぞ温かいうちに召し上がってください。お口に合うといいんですけど……」

 私はいつも野菜を沢山入れる食事を作る。和真は好き嫌いが多かったので極力野菜は入れないようにしていた。でも藤堂さんはどんなものが好きで嫌いかよくわからない。彼がお箸を取ってお味噌汁を口にするのをドキドキしながら見つめた。

 「うん、美味しい。やっぱり味噌汁はホッとする。こういう時に自分は日本人なんだって思うよ。向こうでは朝はシリアルとかトーストばかりだったから。作ってくれてありがとう」
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