キミと桜を両手に持つ
彼は長旅で疲れているのに快く買い物に付き合ってくれ荷物なども自らすすんで持ってくれる。
アメリカ暮らしで身についたのか、それとも元々そういう人なのか、彼はとてもレディーファースト。ドアも開けてくれたり、道を歩いていても道路側は彼が歩いてくれたり、夕食も手伝ってくれたりととても気を使ってくれる。
「藤堂さん、お疲れじゃないですか?お休みされてもいいですよ。後は私が全部片付けるので」
その日の夕方、夕食を食べたあと一緒に片付けてくれる彼に声をかけた。
「ありがとう。じゃあこの片付けが終わったら寝るよ。いつもアメリカから帰って来るときは真夜中に出る飛行機で帰ってくるんだ。そうすると飛行機に乗ってる間、ほとんど寝てしまうから日本に朝着いた時あまり疲れないし時差ボケにもならないんだ。でも夕方はやっぱり早く眠くなるな」
そう言って彼はふあっと欠伸をした。はっきり言って彼がこんなにくつろいだり笑ったりしているのを初めて見る。もしかして仕事では厳しい顔をしているのかもしれないけど本来の彼はこんな感じなのかもしれない。
「こうしてお話しするのって初めてですよね。藤堂さんってもっと気難しい人なのかなって思ってました」
すると彼は小さく声を出して笑った。
「実はよく言われるんだ。あまり顔の表情が豊かじゃないんだろうな。無愛想だって言われる。如月さんはいつも凛としていてクールな女の子だと思ってたよ。でも想像してたのと全然違って本当はちょっと隙があって可愛い人なんだな」
か、可愛い人だなんて……。
お世辞とはわかっているものの普段誰からもそんな事を言われたことがないので赤面してしまう。それに隙があるなんて初めて言われてしまった。
なんとなく気恥ずかしくて彼の顔をまともに見れなくて目を逸らすと、
「本当に会社にいる時と全然違うんだな」
彼は笑いながら少し驚いたように私を覗き込んだ。