キミと桜を両手に持つ
それじゃ彼とはこのままずっとここで一緒に暮らせるってこと?今までみたいに一緒に買い物に行ったり、他愛もない話をしながらご飯を作ったり食べたりできるって事……?
「ほ、本当にいいんですか……?」
「この一ヶ月、如月さんと一緒に暮らしてとても楽しかった。毎日帰ってくると君がいて、一緒に話をしながらご飯食べたり、ソファーの上でくつろぎながら映画を見たり……。俺は君とのこの生活が気に入っている。如月さんはどう思う…?」
藤堂さんは少しはにかんで首を傾げた。
「もちろん嫌になったらここから引っ越せばいい。誰も君を止めはしない。でも如月さんが望むなら今日からここが君の家だ。あの寝室も好きなものを飾って好きなようにしてごらん。家具が必要なら一緒に買いに行こう」
……今日からここが……私の家……?
私はこの一ヶ月住みなれた部屋をぐるりと見渡した。
彼と一緒に料理をしたキッチン。毎晩一緒にご飯を食べたダイニングテーブル。週末一緒に毛布に包まって映画を見たソファー。そして目の前にいる藤堂さん……。
「今日からここがわたしの帰ってくる家……?」
「そうだ。今日からここは君と俺の家だ」
……私と藤堂さんの家……
何故か彼のこの言葉に胸がギュッと締め付けられて目の奥がじーんと熱くなる。
「あ、ありがとうございます。私なんて感謝したらいいか……」
自分の中の荒れ狂う感情についていけなくて戸惑っていると彼の手がそっと私の髪に触れた。
「……凛桜って呼んでいい?」
「ど、どうして?」
「詩乃も名前で呼んでるだろ?……二人の時は凛桜って呼びたい」
藤堂さんは私の髪を長くて綺麗な指にクルリと絡めるとその感触を楽しむかのように指で弄んだ。