キミと桜を両手に持つ
「も、もちろんいいですけど……」
でも突然どうして……?正式なルームメイトになるからもう少しカジュアルになろうって事なのかな……?
「凛桜って綺麗な名前だよな。もしかして3月とか4月生まれ?」
よく聞かれる質問に思わずふふっと笑った。大抵の人は私の名前を見てそう思う。
「実は11月生まれなんです」
「11月?」
「冬に咲く桜って知ってますか?色々あるんですけど冬桜って言って10月から1月にかけて咲くらしいんです。昔母が旅行してて何処かの神社で見た事があるらしくて、枝に少しだけ咲いている桜を見てとても愛らしいと思ったそうです。それで11月に生まれた私に寒い中健気に咲いている桜のように愛らしく、でも凛として逞しく育って欲しいと思ったみたいです」
確か年に2回咲く桜だと聞いている。桜の蕾は夏にできる。なので一回目は冬にその三分の一ほど花を咲かせ、そして二度目は春に残りの三分のニを咲かすらしい。
「なるほど。それで凛桜って名前なんだ。君によく合ってる」
藤堂さんはふっと笑みを浮かべてから、急に真顔になった。
「君のマンションの解約の件なんだけど、俺に任せてくれないか?」
「でもこれ以上私の事で藤堂さんに迷惑をかけるわけには──…」
「相手は君の元彼氏かもしれないけど一応男だ。こういう時は男が対応した方がいいこともある」
彼の真っ直ぐで真剣な瞳には私への心配が見て取れる。
確かに彼の言う事にも一理ある。和真にまた押さえつけられたら女の私では太刀打ちできない。でも藤堂さんが間に入る事で和真が激怒して彼に迷惑をかけるような事でもされたらそれこそ申し訳ない。