キミと桜を両手に持つ
恋してる女の子って本当に可愛いよね。いいなぁ。私にもいつか誰かいい人が現れるのかな……。
ふと藤堂さんの顔が頭をよぎる。今朝彼の指が私の頬に触れたことを思い出して思わず手を頬にあてた。正式に同居することになってからというもの、彼と私の距離は徐々に縮まりつつある。
藤堂さんって私のことどう思ってるんだろう……?
彼はいつも優しい。でも藤堂さんは元々包容力もあって責任感も強いとても大人な男性。その優しさが私に特別に向けられたものなのかよく分からない。結局の所、私は彼の事を何も知らないし、よくわからない。
エレベーターホールから急いで制作部に戻った私は、堀川君のデスクへと向かった。
「ねぇ、堀川くん、さっきも連絡入れたんだけどメール見た?KIRA Hair Salonの有栖さんから電話があって、今確認してもらってるサイトのページが一部壊れてるって」
堀川くんは私が今担当しているヘアサロンのウェブサイトをコーディングしている。昨日確認した時はページが壊れてなかったので、有栖さんにテストサーバーに上げているページを確認してもらっていた。
でも私が昨日確認した後、おそらく彼がページの一部を触ってしまったのだろう。有栖さんから電話が来た後慌てて確認すると、レイアウトが崩れていた。
「えっ、マジで?ごめん、今確認する」
堀川くんはメガネのブリッジを指でクイっと上げると、テストサーバーにアクセスしてページを開いた。
「あ、本当だ……。きっと昨日バグ修正した時にうまく更新できなかったのかも。ごめん……」
彼はそう言いながら最新のページを再びアップするけど、バグが残ったままでページのレイアウトが崩れている。