キミと桜を両手に持つ
彼が笑っているのにつられてわたしも笑い出した。
「何を入れたんですか?」
「レシピ通りだよ、最初はね。でも味が薄くて色々と足したり他のものを加えたりしている内にだんだん変な味になってきてどうにもならなくなった。本当にごめん」
こんなに綺麗に野菜とか切ってあって見た目も完璧なのに味付けが出来ないなんて勿体無い。いつも完璧な彼なのに出来ないこともあるんだと思ってクスクスと笑った。
「これでなぜ俺が君と同居したいって言い出したかわかっただろ?」
彼が冗談でそう言うのを聞いて、今までどうしていたのか急に気になった。
「アメリカで暮らしてた時はどうしてたんですか?」
「基本的には塩胡椒だけだな。それなら俺にも味付けはできる。だから肉や野菜を塩胡椒で炒めたり焼いたりしてた。それ以外は殆どテイクアウト」
そう言った後、彼はものすごく申し訳なさそうに私を見た。
「本当にごめん。それ食わなくていいから。どこかでテイクアウトしてくる」
「待って!テイクアウトしなくてもこれで十分です」
本当にお粥を何処かでテイクアウトしそうな勢いで、慌てて彼を引き止めた。
「確かお漬物ありましたよね。それがあればきっと丁度いい味になります」
不味くて食べられないという程じゃない。それに彼が一生懸命作ってくれた心がこもったお粥なので食べたい。
「そうか、漬物があったな」
と言ってキッチンに戻るとお漬物と彼が食べるお粥も器に入れて持ってきた。
「おかわり欲しかったら教えて。たくさんあるから」
「ふふっ、どれだけ沢山作ったんですか?」
笑いながら尋ねると
「結構沢山。最初は足りないかと思って足したんだけどお粥ってすごく増えるんだな」
そんな藤堂さんの話を聞いてクスクス笑いながら食べていると、慈しむような優しい笑みと視線にぶつかった。