キミと桜を両手に持つ
「凛桜、この後薬飲んで寝るだろ?そこで寝ないか?」
藤堂さんはテレビの前にある大きなソファーを指差した。
「それベッドになるんだ」
「ソファーベッドだったんですね。どうりで普通のソファーと少し違うなと思ってました」
以前からいつもソファーの下になにかいろいろあるなとは思っていた。あれはベッドになるフレームだったのだと今ようやく気付く。
「でも、藤堂さんに風邪を移しても申し訳ないのでこのまま部屋で寝ます」
お粥をほとんど食べきって、目の前に置いてくれた薬を水と一緒にゴクンと飲み込んだ。
「んー…凛桜の部屋で一緒に寝てもいいんだけど、そこで寝た方が広いし看病しやすいから」
「えっ……?」
なんか今、一緒に寝るって聞こえたような気がして思わず聞き返した。
「だって一人で寝かせたら突然具合が悪くなった時や吐いた時わからないだろ?ここだったら日中は俺も目がよく行き届くし、夜は一緒に寝れるから」
「藤堂さん、それ心配しすぎです。大丈夫ですよ、これくらい。それに風邪が移ったら本当に大変だから……」
あまりの過保護さにふふっと笑った。でも彼は至って本気。リビングにあるソファーの下からベッドフレームを引き出してベッドにした。
「大丈夫。でももし俺も風邪をひいたら一緒に二人でベッドで寝てればいい。俺は全然それでも構わないよ」
藤堂さんはクスっと笑うと、せっせとシーツや上掛けを運んできてベッドを整えた。
「俺が看病したいんだ。本当は昨日ミーティングをした時に君が具合が悪かったのに気づくべきだったんだ。だから俺に看病させて」
彼はベッドの上に寝っ転がるとポンポンとベッドを軽くたたいた。