キミと桜を両手に持つ
「はい、ここで寝て」
ほ、本気なの……?
藤堂さんとベッドを交互に見つめる。ソファーベッドは二人で余裕で寝れるクイーンサイズベッドの大きさ。
「ほら、早く」
再び藤堂さんに促され、おずおずとベッドに横になった。
清潔な真っ白いシーツがひやりと冷たくて火照った頬に気持ちいい。安堵のため息をついて目を閉じると藤堂さんが上掛けをかけてくれた。
「凛桜、大丈夫?なにか必要なものある?」
目を閉じたままふるふると頭を振ると、彼の手がまるで小さな子供をあやすかのように頭を優しく撫でた。
いつも病気の時は一人でなんとか乗りきっていたので、こうして誰かが側にいて看病してもらえることがこんなに有難いことなんだと初めて知る。
「藤堂さん、ありがとう」
彼は「My Pleasure」と英語で代わりに答えて、私の頭や頬を優しく撫でた。
この「My Pleasure」は意味合い的には日本の「どういたしまして」になる。でも直訳すると「それは私の喜びだよ」になる。
きっと彼が日本語で「どういたしまして」と答えるよりもこの「My Pleasure」の方が合ってると思ってわざわざ言い換えてくれたに違いない。
そんな心遣いが嬉しくて、彼の撫でてくれる手がとても気持ちよくて、まるで猫か小さな子供にでもなったかのように目を閉じたままいつまでも甘えた。いつも思うけど彼は包容力があると言うか面倒見がとてもいい。
「藤堂さんってもしかして長男ですか?」
何となくそうかなと思って聞くと彼はハハッと笑った。
「実は四人兄弟の末っ子なんだ。兄が一人と姉が二人いる」