キミと桜を両手に持つ

 「お父様の事業って大きいんですか…?」

 「うん、まぁ親父の事業というか曽祖父から続いている事業でね。家族でそれを継いでやってるんだ」

 へぇー。先祖代々から続いてるんだ。どんな仕事なんだろう?そういえば藤堂さんよくスイーツを買ってきてくれるけど、もしかして老舗の和菓子屋さんだったりして?

 でも兄弟が沢山いて先祖代々からの事業があって、そしてそれを家族で協力しながら守って継いでいくってすごいなと思う。

 仕事をしている藤堂さんを見てても思うけど、彼は責任感が強くて堂々としていてとてもしっかりしている。きっとすごく良い家庭で育ったんだろうなと思う。母子家庭で育った私にはなんだかとても羨ましい話。

 「いいなぁ。私もお兄ちゃんとかお姉ちゃんがほしかったなぁ」

 「凛桜は一人っ子なの?」

 「そうなんです。だから兄弟がいるってすごく羨ましくて」

 先ほどから藤堂さんは私を抱き寄せて背中を撫でている。彼の手が上へ下へ、そしてまた上へと動くたびにとても気持ちよくて、それに薬も効いてきたのかなんだか目がトロンとして眠くなってくる。

 「藤堂さんみたいなお兄ちゃんがいたらよかったのに。そしたら私きっと一生幸せだったかも」

 気怠くなってきて、なんだか頭もふわふわしてきて彼に抱かれるまま腕の中でボソリと呟いた。すると藤堂さんはクツクツ笑って、私の顎をそっと持ち上げた。

 「そうだな。俺もこんな可愛い妹がいたらきっと一生手放すことができない」

 彼は愛しそうに私を見ると顔を寄せて熱冷ましシート越しに額にキスをした。

 「なっ……!」

 慌てておでこに手のひらをあてた。な、なんでいきなりおでこにキス??
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