キミと桜を両手に持つ
「今日は何作ってるの?」
キッチンを覗くと韓国料理なのか辛そうな色のチキンやナムルなどすでにたくさん用意されている。彼女は小さい頃から家事をしているからか料理がとても上手だ。
「今日は韓国料理作ってみました。チャプチェとヤンニョムチキンとナムルに豆腐チゲです。なんだか辛い物が食べたくて」
「うまそうだな。俺も何か手伝うよ」
「ほとんど終わってるので大丈夫ですよ。先にお風呂に入って来てください。あ、でもその前にこれ味見して欲しいかも。もう少しお塩入れた方がいいですか?」
凛桜はフライパンの中のチャプチェを箸で一口ほどつまむと、小さな小皿に入れて差し出した。一樹は小皿を受け取る代わりにわざと顔を近づけた。
「手がまだ汚いから食べさせて」
「え……」
「ほら早く」
「は、はい」
一樹が口を開けると彼女はおずおずとチャプチェを口の中に入れた。彼女の顔を見ながら咀嚼していると、だんだんと彼女の頬が赤く火照ってきて呼吸も少し震えてくる。一樹にどぎまぎしているのが手に取るようにわかる。
「うん、美味しい。塩加減はちょうどいいよ」
「そ、そうですか?」
凛桜は一樹の事を信頼しているけど、でも男としても意識している。そう思うと嬉しくてたまらない。もっともっと彼女に自分のことを意識してほしい。
「ねぇ、凛桜。今晩もまた一緒に映画見る?」
「はい!あ、でも……えっと、あのソファーで……?」
凛桜はテレビの前にあるソファーをちらりと見た。先週あのソファーベッドで、歓迎会の時に一樹が女性に囲まれていたのが嫌だったとヤキモチを焼いていた彼女があまりにも可愛くてキスをした。