キミと桜を両手に持つ

 「そういえば藤堂さんは望月店長から何を見せてもらってたんですか?」

 先ほど望月さんと二人で消えて何をしていたのか急に気になった。ここではカスタマイズした家具も買える。もしかしてなにか新しく購入するものでもあったのかな……。


 「……秘密。そのうちわかる」

 藤堂さんは私の腰に腕を絡めて抱き寄せると何故か色っぽく低い艶のある声で耳元に囁いた。

 「本当に仲がよろしいんですね」

 望月さんの奥さんがふふっと笑いながら私達を見ているのに気づいた。藤堂さんはただ揶揄って遊んでいるだけだけど、傍から見るとただの同居人ではなく恋人か夫婦に見えるのかもしれない。

 私と藤堂さんは一緒に同居してからというもの日に日に距離が縮まっている。今まで恋人でもない男性と同居した事がないのでこれが普通なのかよくわからない。

 でも私たちの同居生活はとてもうまくいっている。同じ屋根の下に暮らす者同士、仲が悪いよりは良い方がいいに決まってる。

 「ええ、そうなんです」

 藤堂さんは嬉しそうにそう答えた。

 「それでは家具の配送の件よろしくお願いします」

 私と藤堂さんが一緒に店を出ようとした時、望月さんの奥さんが店の奥から紙袋を持ってきた。

 「あの、これよかったらお使いください」

 中を見ると、先ほど寝室の家具が置いてあるセクションで見かけたスタイリッシュなベッドサイドランプだ。

 「えっ?いいんですか、これいただいても?」

 「私達からのプレゼントです。お二人の寝室にどうぞ」

 望月さんの奥さんが完全に私たちの関係を誤解していて赤面してしまうけど、わざわざ気を使ってランプをくれるなんてその気持ちだけでも嬉しい。

 「ありがとうございます。では大切に使わせて頂きます」

 私と藤堂さんは再び望月夫妻とスタッフにお礼を言うと店を後にした。
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