悪女だってヒロインになりたいんです。
「その、制服…」


更衣室から出ると控え室には椅子に腰掛けた坂上くんが一人で待っていて、私の制服を見てなぜか少し驚いていた。


「え?制服?」

「あ、いや…なんでもない。俺ももう上がりなんだ。それよりも七瀬さん、覚えが早くてすごく助かったよ。ただでさえうち同い年のバイトの人少なかったから、話せる人増えて嬉しいし」

「いや、坂上くんのおかげだよ」


たしかに同い年の人は今日働いていた中では私と坂上くんの二人だけで、あとは一個上や二個上、大学生なんかが多くて話すだけでも緊張してしまった。

坂上くんが言うには同い年の人が男女であと一人ずついるみたいだけど、真面目で仕事ができる人たちのようで坂上くんほどフレンドリーに話せる自信はない。


「これからよろしくね。これも何かの縁だと思うし、七瀬さんと仲良くなれたらいいなと思ってるから」


にこっと爽やかに微笑みながら片手を差し出してきた坂上くんに、なぜか一瞬だけゾッとしてしまう。


なんでだろう…。なぜか一瞬、顔は笑っているのに目は笑っていない私に合図を送ってくる時の美亜の姿と目の前にいる坂上くんが重なって見えた気がした。

そんなことあるはずがないのに。


「七瀬さん?」
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