悪女だってヒロインになりたいんです。
まさかあの棗が和佳の言葉を本気にして本当に迎えにきてくれるなんて。

驚きすぎてどう反応すればいいのかわからない。


「でも家すぐそこだよ?繁華街抜けた先だから…」

「夜になるとここらへんホテル街だし治安悪いんだよ。藤峰から言われてたのにやっぱり全然危機感持ってなかったんだな」


呆れたようにため息を吐いている棗に、うっと言葉を詰まらせる。

たしかにこの時間まで外を出歩いたことなんてなかったから、和佳や棗が言うほど危機感を持っていなかったことは事実だ。

そんなに言われると一人で帰るのも怖くなってきた。

もちろんそんなこと棗に言えるわけがないけど。


「…じゃあお言葉に甘えて、送ってもらってもいい?」


だからここは素直に棗にお願いをすることにした。

それに棗と一緒にいられる口実にもなるし。


「…行くぞ」


短く返事をした棗が私の歩幅に合わせるようにしてゆっくりと歩き出し始め、慌ててその隣をついていく。

しかし何を話せばいいのかわからず、私たちの間には重い沈黙が流れていた。
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