猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
第二章 最初で最後の奇跡
気づけば、猫巡り部の部室の前だった。
部室のドアの前で、渚くんはぎこちなく振り返った。
「何だか緊張するな」
「渚くん、一ヶ月ぶりだもんね」
わたしが手を伸ばした時、ドアはがらりとひとりでに開いた。
「にゃー! 猫巡り部へようこそ! 私が部長の井上つむぎです!」
開いたドアの向こうには、両手を大きく広げる女の子。
二つ結びのお下げにした髪に、華やかな顔立ち。
猫巡り部の部長、三年の井上つむぎ先輩が満を持って立っていた。
「猫巡り部は猫に関する、どんな悩みや望みでも叶えられるように善処するよ。それとも、猫ミームを見にきたのにゃん?」
井上先輩は目を輝かせて、猫巡り部の説明を口にした。
『猫巡り部』。
それはもともと、猫を愛でる部だった。
猫をもふもふと愛でたり、猫グッズについて語り合ったり、猫の溜まり場に行ったり、猫に関する話題や猫探しのようなことをしていた。
ちなみに『猫ミーム』とは、猫の画像や動画を使って、ダンス、音楽や日常の出来事を面白おかしく表現した動画のことだ。
猫巡り部で見れる動画に出ているのは、井上先輩たちの愛猫たちである。
そんな猫大好き、猫巡り部の活動内容が少し変わったきっかけ。
それは一年前、井上先輩たちがたまたま巻き込まれる形で、何匹かの猫に関する頼みを聞いたことにあった。
もう、その飼い主たちは卒業しているけれど、そのことが何故か、周囲に伝わってしまったらしかった。
猫に関する願いを叶えてくれる拠り所。
それ以来、猫巡り部は猫に関する悩み事や望みなどを叶える便利屋として、一部で知れ渡ることになってしまったのだ。
「……って、おや?」
「井上先輩、お疲れ様です!」
「井上先輩、お久しぶりです」
わたしが元気溌剌に言うと、渚くんはぺこりと頭を下げた。
「えっ、安東くん?」
井上先輩は目をぱちくりと何度も瞬いてみせる。
「どういうこと? もしかして、新手のドッキリ?」
「わあっ! ドッキリではないです!」
井上先輩にずいっと迫られて、わたしの心臓は壊れそうなほど暴れ出した。
部室のドアの前で、渚くんはぎこちなく振り返った。
「何だか緊張するな」
「渚くん、一ヶ月ぶりだもんね」
わたしが手を伸ばした時、ドアはがらりとひとりでに開いた。
「にゃー! 猫巡り部へようこそ! 私が部長の井上つむぎです!」
開いたドアの向こうには、両手を大きく広げる女の子。
二つ結びのお下げにした髪に、華やかな顔立ち。
猫巡り部の部長、三年の井上つむぎ先輩が満を持って立っていた。
「猫巡り部は猫に関する、どんな悩みや望みでも叶えられるように善処するよ。それとも、猫ミームを見にきたのにゃん?」
井上先輩は目を輝かせて、猫巡り部の説明を口にした。
『猫巡り部』。
それはもともと、猫を愛でる部だった。
猫をもふもふと愛でたり、猫グッズについて語り合ったり、猫の溜まり場に行ったり、猫に関する話題や猫探しのようなことをしていた。
ちなみに『猫ミーム』とは、猫の画像や動画を使って、ダンス、音楽や日常の出来事を面白おかしく表現した動画のことだ。
猫巡り部で見れる動画に出ているのは、井上先輩たちの愛猫たちである。
そんな猫大好き、猫巡り部の活動内容が少し変わったきっかけ。
それは一年前、井上先輩たちがたまたま巻き込まれる形で、何匹かの猫に関する頼みを聞いたことにあった。
もう、その飼い主たちは卒業しているけれど、そのことが何故か、周囲に伝わってしまったらしかった。
猫に関する願いを叶えてくれる拠り所。
それ以来、猫巡り部は猫に関する悩み事や望みなどを叶える便利屋として、一部で知れ渡ることになってしまったのだ。
「……って、おや?」
「井上先輩、お疲れ様です!」
「井上先輩、お久しぶりです」
わたしが元気溌剌に言うと、渚くんはぺこりと頭を下げた。
「えっ、安東くん?」
井上先輩は目をぱちくりと何度も瞬いてみせる。
「どういうこと? もしかして、新手のドッキリ?」
「わあっ! ドッキリではないです!」
井上先輩にずいっと迫られて、わたしの心臓は壊れそうなほど暴れ出した。