猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
*
張りつめているようで、間延びしているような沈黙の後。
「桐谷さん、あなたまで……」
わたしたちの決意に、天橋先生は納得できていないようだった。
天橋先生の声と表情には、衝撃が張り付いている。
だけど、井上先輩は生温かい笑みを浮かべて――。
「いやいや、私は応援しているよ。桐谷さんはずっと……」
手で口を押さえ、腰砕けになった。
「うんうん、頑張った。桐谷さん、偉いぞ」
井上先輩は嬉しさ全開の顔でガッツポーズしている。
「ふふふ。私は、恋バナ大好きな猫巡り部部長なり。協力してほしければ、私に恋バナをよこすのにゃ」
「…………」
すさまじい脱力感と……完全な不意打ちだった。
井上先輩の恋バナ大好きアピールが止まらなかった。
……もとい、ひと悶着あった後。
わたしたちは校長先生の依頼を受けて、校内をパトロールをしていた。
天橋先生から猫巡り部の話を聞いた校長先生は、先生たちと一緒に、学校の敷地内に入り込んでしまった猫たちを保護するお手伝いをしてほしいと部長の井上先輩にお願いしてきたんだ。
「あ……! 子猫、発見!」
「にゃー」
激しい攻防の末、わたしはせまい場所に入り込んでいた一匹の子猫を発見した。
その声を聞きつけて、先生たちが即座に子猫を保護する。
「ようやく一匹……保護できた……」
とめどなく弾む胸をおさえて、わたしは深呼吸をひとつする。
「そういえば、猫って、よくせまいところに突撃しているけれど、どうしてなんだろう? せまいところ、好きなのかな?」
疑問を口にすると、渚くんはわたしの髪を優しく撫でた。
いつもと同じように。
「猫にとって、せまいところは安全で安心できる場所なんだ。野生だった頃、獲物や敵に見つからないように、茂みやもぐれる場所を巣にしていたんだ。その名残で、猫はせまいところを好むんだ」
「そうなんだ」
穏やかに笑う渚くんを、わたしは胸が熱くなるのを感じながら見つめてしまう。
「うーん。でも、このままじゃ、いつまでも追いかけっこが終わらないよね」
わたしは迷うように口を動かし、そして躊躇うように視線を落とした。
校内の追いかけっこは、野良猫たちの方が一枚上手だ。
どうしたらいいんだろう。
……あ、そうだ!
閃いたわたしは、井上先輩から『秘密兵器』を借りてくる。
張りつめているようで、間延びしているような沈黙の後。
「桐谷さん、あなたまで……」
わたしたちの決意に、天橋先生は納得できていないようだった。
天橋先生の声と表情には、衝撃が張り付いている。
だけど、井上先輩は生温かい笑みを浮かべて――。
「いやいや、私は応援しているよ。桐谷さんはずっと……」
手で口を押さえ、腰砕けになった。
「うんうん、頑張った。桐谷さん、偉いぞ」
井上先輩は嬉しさ全開の顔でガッツポーズしている。
「ふふふ。私は、恋バナ大好きな猫巡り部部長なり。協力してほしければ、私に恋バナをよこすのにゃ」
「…………」
すさまじい脱力感と……完全な不意打ちだった。
井上先輩の恋バナ大好きアピールが止まらなかった。
……もとい、ひと悶着あった後。
わたしたちは校長先生の依頼を受けて、校内をパトロールをしていた。
天橋先生から猫巡り部の話を聞いた校長先生は、先生たちと一緒に、学校の敷地内に入り込んでしまった猫たちを保護するお手伝いをしてほしいと部長の井上先輩にお願いしてきたんだ。
「あ……! 子猫、発見!」
「にゃー」
激しい攻防の末、わたしはせまい場所に入り込んでいた一匹の子猫を発見した。
その声を聞きつけて、先生たちが即座に子猫を保護する。
「ようやく一匹……保護できた……」
とめどなく弾む胸をおさえて、わたしは深呼吸をひとつする。
「そういえば、猫って、よくせまいところに突撃しているけれど、どうしてなんだろう? せまいところ、好きなのかな?」
疑問を口にすると、渚くんはわたしの髪を優しく撫でた。
いつもと同じように。
「猫にとって、せまいところは安全で安心できる場所なんだ。野生だった頃、獲物や敵に見つからないように、茂みやもぐれる場所を巣にしていたんだ。その名残で、猫はせまいところを好むんだ」
「そうなんだ」
穏やかに笑う渚くんを、わたしは胸が熱くなるのを感じながら見つめてしまう。
「うーん。でも、このままじゃ、いつまでも追いかけっこが終わらないよね」
わたしは迷うように口を動かし、そして躊躇うように視線を落とした。
校内の追いかけっこは、野良猫たちの方が一枚上手だ。
どうしたらいいんだろう。
……あ、そうだ!
閃いたわたしは、井上先輩から『秘密兵器』を借りてくる。