猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
「わたし、渚くんのことが好きなの! 本当に大好きなんだから!」
口にすればするほど、自分の気持ちが筒抜けになってしまうような気がした。
でも、この気持ちは伝えても伝えきれない。
それはわたしの中で渦巻いていた様々な感情にふるいをかけて、たった一つだけの想いだけを浮かび上がらせていく。
「鹿下くんは……どうして、そんなに……わたしたちのことを必死に否定するの! ……どうして、わたしの心をボロボロにするようなことをするの!」
「それは……」
最後のひと押しに、鹿下くんはぐっと押し黙る。
だけど、次に続いた言葉は静かな声だった。
在りし日の過去の余韻に浸るみたいに。
「桐谷、今、言うのは卑怯だって分かってる。でも、聞いてほしい」
「卑怯……?」
鹿下くんの真意を、わたしはよく理解できなかった。
「安東は月果て病になる前、おまえとおそろいのキーホルダーを失くした。安東の未練は、そのキーホルダーを見つけることなんだ」
「……えっ?」
驚きだけが、ただただ音になって溢れる。
「安東にとって、あのキーホルダーは何よりも大切で特別なものなんだ。おまえとの思い出が詰まったものだからな。安東は月果て病で亡くなるまで、そのキーホルダーを失くしたことをずっと悔やんでいた」
幼い頃、誕生日プレゼントにもらった、渚くんとおそろいのキーホルダー。
渚くんがあのキーホルダーを失くしたことを、ずっと悔やんでいたなんて予想もしていなかった。
「キーホルダーが見つかれば、安東の未練は晴れる。そして、安東のロスタイムは、そこで終わる。この意味が分かるか?」
鹿下くんの言葉は、わたしの現実味を重くし、何も言えなくする。
大好きな人が今、死の近くにいる。
それは、穏やかな日常を過ごしていたわたしには信じ難いことだった。
「桐谷が見ている安東は幻想だよ。クロム憑きの現象が――月果て病の奇跡が終われば、安東は消えてしまうんだからな」
鹿下くんが笑みを浮かべながら取り出したものは、わたしに大きな衝撃を与える。
それはあの日、渚くんがくれた、おそろいのキーホルダー。
そのペアの片方だった。
口にすればするほど、自分の気持ちが筒抜けになってしまうような気がした。
でも、この気持ちは伝えても伝えきれない。
それはわたしの中で渦巻いていた様々な感情にふるいをかけて、たった一つだけの想いだけを浮かび上がらせていく。
「鹿下くんは……どうして、そんなに……わたしたちのことを必死に否定するの! ……どうして、わたしの心をボロボロにするようなことをするの!」
「それは……」
最後のひと押しに、鹿下くんはぐっと押し黙る。
だけど、次に続いた言葉は静かな声だった。
在りし日の過去の余韻に浸るみたいに。
「桐谷、今、言うのは卑怯だって分かってる。でも、聞いてほしい」
「卑怯……?」
鹿下くんの真意を、わたしはよく理解できなかった。
「安東は月果て病になる前、おまえとおそろいのキーホルダーを失くした。安東の未練は、そのキーホルダーを見つけることなんだ」
「……えっ?」
驚きだけが、ただただ音になって溢れる。
「安東にとって、あのキーホルダーは何よりも大切で特別なものなんだ。おまえとの思い出が詰まったものだからな。安東は月果て病で亡くなるまで、そのキーホルダーを失くしたことをずっと悔やんでいた」
幼い頃、誕生日プレゼントにもらった、渚くんとおそろいのキーホルダー。
渚くんがあのキーホルダーを失くしたことを、ずっと悔やんでいたなんて予想もしていなかった。
「キーホルダーが見つかれば、安東の未練は晴れる。そして、安東のロスタイムは、そこで終わる。この意味が分かるか?」
鹿下くんの言葉は、わたしの現実味を重くし、何も言えなくする。
大好きな人が今、死の近くにいる。
それは、穏やかな日常を過ごしていたわたしには信じ難いことだった。
「桐谷が見ている安東は幻想だよ。クロム憑きの現象が――月果て病の奇跡が終われば、安東は消えてしまうんだからな」
鹿下くんが笑みを浮かべながら取り出したものは、わたしに大きな衝撃を与える。
それはあの日、渚くんがくれた、おそろいのキーホルダー。
そのペアの片方だった。