猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
「渚くん、覚えている? わたしが持っている『夢魂の力』」
「ああ、もちろん。自分が見ている夢の中に、別の誰かを招く力。冬華が、俺にだけ明かしてくれた秘密の力だからな」
それはただ事実を述べただけ。
しかし、その言葉は、渚くんには額面以上の重みがあったみたい。
「あっ……、そういうことか! だから俺たち、同じ夢を見ていたんだな!」
渚くんが感激したみたいに、瞳をきらきらさせて拳を握りしめる。
そういった彼のひとつひとつの動作に、どうしようもなく、胸が高鳴ってしまう。
「冬華の力は相変わらず、すげえな」
「でも、誰でも夢の中に招くことができるわけじゃないよ。それ相当の強い想いがないと叶わない」
覚悟を決めて、渚くんを切望する。
その独占じみた想いに、わたしの胸が強く脈打った。
「だから、わたしは強く強く願った。渚くんにまた、会いたいと。そうして、わたしはこの力で、『わたしの夢の世界』に『君』を招くことに成功したんだ」
「だから、冬華と同じ夢を見ていたのか。超奇跡感、ハンパないなー」
そう感想を述べた渚くんの笑顔はまぶしくて。
思わず、心を弾ませてしまう。
彼とはまだ、出会って数時間しか経っていないのに。
その優しい声に、柔らかい微笑みに、そして存在そのものに、安心感を覚えてしまっていた。
きっと、毎日、夢の中で会っていたからだろう。
「超奇跡感ってなに?」
「ほら、夢魂の力とクロム憑きという現象。二つの奇跡が重なったおかげで、俺たちはこうして会えただろう」
わたしはぱちくりと目を瞬いた。
「確かにそうかも」
「冬華、俺を見つけてくれてありがとう」
渚くんはどこまでも楽しそうで、何だか心がくすぐったくなる。
教室を出て、二人で廊下を歩く。
クロム憑きになった人は、世界中でもごくわずかだ。
物珍しいのだろう。
ざわざわと周りにいた人たちが、わたしたちに注目していた。
「あ、渚くん。前も話したけれど、この夢の力のことは他の人には内緒だからね。二人だけの秘密にしたいから」
人差し指を立ててそう言うと、わたしは渚くんの手を握った。
すると、渚くんもすぐに握り返してくれる。
渚くんの手は温かくて、包み込んでくれるような安心感があった。
その温もりは、ふたりがどこまでも鏡写しのようにそっくりであるという事実を、嫌というほど証明してくる。
隣を歩いているのは、本物の渚くんではないと分かっているのに。
「ああ、もちろん。自分が見ている夢の中に、別の誰かを招く力。冬華が、俺にだけ明かしてくれた秘密の力だからな」
それはただ事実を述べただけ。
しかし、その言葉は、渚くんには額面以上の重みがあったみたい。
「あっ……、そういうことか! だから俺たち、同じ夢を見ていたんだな!」
渚くんが感激したみたいに、瞳をきらきらさせて拳を握りしめる。
そういった彼のひとつひとつの動作に、どうしようもなく、胸が高鳴ってしまう。
「冬華の力は相変わらず、すげえな」
「でも、誰でも夢の中に招くことができるわけじゃないよ。それ相当の強い想いがないと叶わない」
覚悟を決めて、渚くんを切望する。
その独占じみた想いに、わたしの胸が強く脈打った。
「だから、わたしは強く強く願った。渚くんにまた、会いたいと。そうして、わたしはこの力で、『わたしの夢の世界』に『君』を招くことに成功したんだ」
「だから、冬華と同じ夢を見ていたのか。超奇跡感、ハンパないなー」
そう感想を述べた渚くんの笑顔はまぶしくて。
思わず、心を弾ませてしまう。
彼とはまだ、出会って数時間しか経っていないのに。
その優しい声に、柔らかい微笑みに、そして存在そのものに、安心感を覚えてしまっていた。
きっと、毎日、夢の中で会っていたからだろう。
「超奇跡感ってなに?」
「ほら、夢魂の力とクロム憑きという現象。二つの奇跡が重なったおかげで、俺たちはこうして会えただろう」
わたしはぱちくりと目を瞬いた。
「確かにそうかも」
「冬華、俺を見つけてくれてありがとう」
渚くんはどこまでも楽しそうで、何だか心がくすぐったくなる。
教室を出て、二人で廊下を歩く。
クロム憑きになった人は、世界中でもごくわずかだ。
物珍しいのだろう。
ざわざわと周りにいた人たちが、わたしたちに注目していた。
「あ、渚くん。前も話したけれど、この夢の力のことは他の人には内緒だからね。二人だけの秘密にしたいから」
人差し指を立ててそう言うと、わたしは渚くんの手を握った。
すると、渚くんもすぐに握り返してくれる。
渚くんの手は温かくて、包み込んでくれるような安心感があった。
その温もりは、ふたりがどこまでも鏡写しのようにそっくりであるという事実を、嫌というほど証明してくる。
隣を歩いているのは、本物の渚くんではないと分かっているのに。