夜を照らす月影のように#10
ネクロマンサーのカズの言葉に、冬樹さんは「あ、どうも。あの時、あなた方に倒されたはずの物の怪の冬樹でーす」と自己紹介をした。……日本語で。

僕は、時間がないのもあって簡潔に話す。

ことの発端は、あの日、シャルロットが閉じ込められていた「小さな雪の天使」の本から戻ってきた日のこと。

何気なく「小さな雪の天使」を読み返していて、小さな雪の天使に載っている僕の書いた詩を口にした時だった。

僕は何故か小さな雪の天使の世界にいて、少し町を散策していた時に、僕らが倒したはずの人型の物の怪が倒れているのを見つけた。

「……そこの人間、助けて欲しい」

物の怪が、話した。しかも、日本語。だから、僕も日本語で物の怪と話をした。

物の怪――冬樹さんは、どうやら日本人らしく無理やりこの世界に連れてこられて、物の怪として生まれ変わったらしい。

冬樹さんは、家族も友だちもいないし命を絶とうと考えていたところだから、無理やり連れてこられるのは良いんだけどねーって笑っていたけど。

僕が冬樹さんに色々と話すと、冬樹さんはオズワルドさんに掛けられていたという操り魔法を自力で破ったという。

「――ということがあって」
< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop