夜を照らす月影のように#10
「……お前、よく元の世界に戻って来れたな」

「何か、適当に小さな雪の天使の文を暗唱したら出れた」

「……オズワルドさんの術を解いて、メルキュールさんの治療を受けて、魔力回復のために寝ていたらですね……なんと、こんな姿になってました」

冬樹さんは、今度は僕らが今使って言語で話す。

「……冬樹さん。この言語で喋れたんですね」

僕がそう問いかければ、冬樹さんは「そうみたいですね。今知りました」と苦笑する。

「知らない言語のはずなのに、皆さんの言っていることも分かりますし、話すことも出来る。世界を渡って、物の怪になった影響でしょうか……とりあえず、今は戦いに集中しましょう。僕も戦います」

冬樹さんが手を前に出すと、細身の剣が現れた。前に戦った時に見たのと同じ剣だ。

その剣を逆手に持って、構える。

そして、冬樹さんは剣を構えていない方の手を空に掲げた。

手に灯った光が打ち上がって、それは上空で分裂する。それは、それぞれオズワルドさん以外の全員に降り注いだ。

……痛みが……これ、回復魔法か?

スっと痛みが引いて、傷も塞がっていく。

「……皆、行くよ!」

ノワールの言葉に、僕らは頷いた。
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