前世で魔王に殺された聖女ですが、ごく平凡な一般人に生まれ変わっても魔王に捕まりました。なんか用ですか?
サラは鍵もかかっていない監獄に戻った。壁に穴の空いたところ以外はなにも変わらずに平穏に過ごした。
三日後、魔王が帰ってきた。

「お帰りなさい」
「少しだけ寝る」
「え?」

感動の再会とはいかず、サラはショックで聞き返す。
魔王はさっさと眠り始めた。



眠りはじめて丸一日経った。
寝息が聞こえてくるのに起きる気配がない。
夕食時、お姉さんが来たので質問をした。

「あの人、全然起きないのだけど大丈夫?」
「はい、少し毒が回っているので眠っていらっしゃるだけです」
「え? ええ――?」

大型動物を一瞬で殺す毒が回っていることに衝撃を受ける。

「解毒剤や血清などは施しましたので問題ないかと思います」
「はあ、それで助かるのね」

三日は動き回っていたような気もするけど本当に大丈夫なのだろうか。
お姉さんは微笑んでいつもの動作で戻っていく。
ベッドに戻って魔王を観察する。

(全部きれい……まつ毛、長いな。唇――)

唇を見たときある衝動にかられた自分に気がつく。
真っ赤になるサラ。顔を埋める。

「こんなときに何を考えているのっ!」

頭を撫でられた。

「!」

パッと顔をあげるサラ。
魔王がこっちを見つめていた。

「お、おはようござい、ます?」
「サラ……逃げなかったんだな」
「ああ、ええ?」
「ここから出る方法を考えていただろう?」
「うーん、ええ、まあ前は」

そんなこともあったなと思う。でも今はそんなつもりは微塵もない。

「でも今はもう少しいても良いかな、って思って」
「少ししかいてくれないのか?」

魔王がサラを抱き寄せた。

「それは……」
「ん?」
返事を促された。覚悟を決めて言ってみる。

「好きに、なりました」

赤くなりもじもじするサラ。

「誰をだ?」

魔王がサラを押し倒す。短い悲鳴が思わず出る。
魔王は怒っているようでいつもより冷たい目をしている。
思った展開と違う。

「俺はそいつを始末しなければならないようだな」
「え?」

その必要はないのだけど何か勘違いしている。
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