俺様御曹司は姉御肌で破天荒な美女を堕とせるか?
確かにあまり思い出したくない事ではある。

小学校3年生だった優依はどうして母親が死ななければいけなかったのか理解できなかった。

その朝いつものように玄関まで一緒にでて優依は学校に行くのに母とは反対方向に歩いて行く為、いつものようにバイバイと気軽に声をかけて別れたのに、それが母と交わした最後の言葉になってしまったのだ。

冷たくなった母の顔をなでても実感はわかなかった。

通夜や葬式も、ただここに座っていてねと言われてずっと座っていただけで、記憶もあまりない。

そしてすべてが終わって母の骨を拾って家に帰って来た時に、初めて祖母に縋りついて号泣したのだ。

もう家には母の姿がなかった。

初めて母は遠くに行ってしまったのだと子供心に実感したのだった。

その後、母が助けた男の子とその両親が祖父母を訪ねてきたが優依は会ってもいない。

だから健一がそんなに優依に執着する意味も解らない。

きっと彼の両親は何かにつけて優依の母が命を懸けて助けてくれたことを忘れずにしっかりと生きてゆくようにと言って育てたのだろうと思う。

優依はおかみさんに

「ありがとうございました。
すごくおいしかったです。夜遅いときに
食べるのにいいですね。お出汁の利いた
鯛茶漬け最高でした。
また来てもいいですか?」

というとすかさず健一が

「僕がいつでも連れてきますよ。
優依さん、僕以外の男や一人では
来ちゃだめだよ」

と訳の分からないことを言っている。
< 13 / 102 >

この作品をシェア

pagetop