隠れる夜の月

 だったら、これから彼女にわかってもらうしかない。
 そのためにはやはり、もう一度話をする機会を作らないと。

 ……しかしその日以降、三花とはまったく遭遇できなかった。すれ違うどころか、遠目に見ることさえも。

 悩んだ挙句、いっそ仕事を口実にしてしまおうと思い至った。
 最近、営業部全体で検討されている件として、各課間の連携をもっと強めるべきだとの意見が取り上げられている。幸いにもというか、それについての一課担当が拓己であり、二課は三花が選出されていた。

 やや無理のある方便だとは思ったが、もはや他に、適当な方法を考えつかなかった。
 登録を解除していなかったメッセージアプリで、久しぶりに三花の名前を選択する。

『営業一課と二課の連携の件で、詰めておきたいことがある。時間取れるか?』

 しばらくして、彼女から返信があった。

『急ですね。今日の戻りは少し遅くなりそうですが、それでよければ』
『かまわない。場所は後で連絡する』

 そうやって彼女を呼び出した、金曜の夕方。場所は駅近くの静かなカフェ――チェーン店ではない、昔ながらの喫茶店だった。

「……ずいぶん、改まった感じですね」

 少し緊張し、戸惑ったような面持ちの三花に「会議室が埋まってて」と苦しい言い訳をしつつも、胸の奥では鼓動が、まるで初心な中高生のように暴れていた。
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