隠れる夜の月
ひとり残されて、なんとなくほっとすると同時に、手持ち無沙汰な気分にもなる。けれどこんな場所での時間つぶしの方法など思いつかない。
仕方なく、テレビニュースの音声を聞くともなしに聞きながらメールチェックをしていると、ほどなくバスルームの扉が開く音がした。
拓己が出てきたのに違いないが、振り返るだけの心の余裕はなかった。メールチェックを続けている振りをしていると、ふつりとテレビの音声が消える。
座っているソファのすぐそばに、拓己が立つ気配がした。
「メール? まだ時間要りそうか」
「い、いえ。もう終わりました」
そう、と応じた彼の候が、どこか硬く聞こえた。
手を取られ、立ち上がらされる。強くはないけれど、意志を持った力で。
「こっち来て」
促された先には、整えられたダブルベッド。反射的に新しい緊張が湧き、踏み出しかけた足が止まってしまう。
ふいに足が、次いで身体が浮き上がる。きゃ、と小さく悲鳴を上げた時には抱き上げられていた。危なげなく移動した拓己は慎重な仕草で三花を下ろしたが、ベッドに乗り上がってくる様子はどこか急いていた。
三花の両脇に手をつき、覗き込んでくる顔にも、焦りのような色が浮かんでいる。
「悪い、ちょっと……余裕ないかも」