隠れる夜の月

 言うが早いか、唇が重ねられた。優しく、だが有無を言わせないふうに押し倒されて、拓己もバスローブを着ている事実に初めて気づいた。

 キスの角度を変えられると同時に、唇を割って舌が入り込んでくる。初めて感じる熱に思わず、密着するバスローブの袖をつかむ。
 彼の舌先が触れるたびに、体の奥が反応して、疼くように熱くなっていく。

「……っ、ふ……ん、ぅ……」

 胸元に触れた手が、迷いない動きで合わせ目の内側へ入り込んだ。
 鷲づかみにされた瞬間、痛みが走った。

「っあ、やっ」

 反射的に身をよじり、唇と手から離れる。浅く息をついていると、見下ろす拓己の顔が傷ついたように歪んだ。

「も、もうちょっと……ゆっくり」

 三花がそう言うと、今度はバツが悪そうな顔をする。

「――ごめん。可愛すぎて気が急いた」

 一瞬遅れて、顔だけでなく体中が真っ赤になる心地がした。そんな三花の様子に、拓己は優しく微笑む。

「ほんとに可愛いよ。……三花」

 初めて呼ばれた名前は、嘘のない愛しさを含んでいるように響いた。
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