Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
A Night to Surrender 君にひざまづく夜
どうやってここに辿り着いたのか、オリヴィアはよく思い出せなかった。
気が付けばオリヴィアは、エドモンドの寝室の扉の前に、彼に抱かれてたたずんでいる。ファレル家の屋敷でそうされたように大事に横抱きにされて、階段さえ上らせてもらえなかった。
濡れていた髪や服が乾燥して、どちらかといえば乱れた格好であるのにも関わらず、オリヴィアの目に映るエドモンドはとびきりの偉丈夫だった。
彼の緑色の瞳に見つめられると、オリヴィアの心はその中に落ちて、永遠に出口を見つけられなくなる。
こんなふうに誰かを愛せるなんて、信じられないくらいだった。
「どうしてもっと、早くこうなれなかったのかしら?」
エドモンドが妻を見つめたままなにも言わなかったので、オリヴィアはそう小声で呟いて、片手を彼の頬ほおに滑らせた。
エドモンドはくすりと短い笑いを漏らした。
「それは、わたしの祖父が信じられないほど意地になって秘密を守ってきたせいでもあるし、わたし自身が、彼よりさらに質の悪い頑固者だったせいでもある」
そこまで言って、エドモンドは肩で押すようにして寝室の扉を開けた。「しかし、聖書にもある。『すべてのものに時あり』」
そして、二人の寝室の扉が開いた。
二人の寝室、だ。
今夜から。