Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
「こうして今まで待ったことで、わたしは幾つかのことを学んだ。一つ、わたしは自分で思うほど、自制心が強いわけではないらしいこと」
床が、オリヴィアを抱いたエドモンドの足の重みにギシリと乾いた音を立てる。
彼が一歩進むたびに、その音は大きく、長くなっていくような気がした。
「二つ、わたしがどれだけあなたを愛しているか。オリヴィア」
抱かれたまま、そっと首筋に口づけを受けた瞬間、オリヴィアは全身を震わせた。
頭がぼうっとして、もう、彼がなにを言っているのか、オリヴィアには確かでなかった。彼を愛する心と一緒に、冷静さとか、判断力とか、そういったものが全て蕩けていってしまったかのようだ。
オリヴィアは彼に愛の言葉を囁き返したかった。
どれだけ彼を愛しているかとか、どんなところが好きでたまらないとか、そういったことを伝えたかった。しかし、オリヴィアが口を開こうとすると、エドモンドはすぐに口づけでそれを遮ってしまう。
「三つ、この愛はどんなものにも勝る。わたし自身の愚かさでさえ、結局は、この想いを止められなかった」
背後にベッドが近づいていたことに、オリヴィアは最後まで気が付かなかった。
ふわりと、まるで身体の重みがなくなってしまったかのように優しく寝台の上に寝かされて、はじめて気が付いたのだ。
エドモンドは両腕で上半身を支えながら、彼女の上に覆い被さるようになり、さらに言葉を続けた。
「ピートの告白を聞いたからといって、わたしが恐れていないとは、思わないでくれ。わたしはあなたを失うことをなによりも恐れている。だから……約束してくれ」
オリヴィアは目頭が熱くなるのを感じて、上手く返事ができないで息詰った。しかし、彼の願いに従う覚悟は、十二分にあった。
「え、ええ……」
「わたしを置いていかないでくれ。わたしの息がある限り、ここで、わたしの側で、生きていて欲しい」
懸命にうなづきながら、オリヴィアはエドモンドに合意した。
ああ、涙をこらえるのが、これほど大変だったなんて。
「その為なら、わたしはどんなことでもする覚悟だ」
ええ、きっとそうね。あなたは約束を守る人だわ……エドモンド・バレット。わたしの愛しい人。
「どんな願いでも叶えてあげよう。昼まで寝ていたいというなら、そうさせてあげる」
オリヴィアは夫の髪をゆっくりと撫でた。
彼は満足そうに目を閉じて、オリヴィアの手首に短い口づけをした。
「約束します、わたしの領主。永遠にあなたの側を離れないわ」
そして夜は二人のために、静かに、ゆっくりと明けていった。
ああ、どの星に、願いを掛ければいいだろう。
*
*