冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 夕飯の支度にはまだ早いのでとりあえず部屋で着替え、本棚からアルバムを取り出して開いた。

 ページの最後に家族四人で写った写真が一枚ある。その日は私の成人式で、美容室での着付けを終え会場へ向かう前に、自宅前で近所の人に撮ってもらったものだ。

 振り袖姿の私と、ラフな私服姿の弓弦。その両脇に、父と母。四人とも、一年後に最悪な形で家族がバラバラになるなんて思いもしていない、幸せいっぱいの笑顔だ。

 後ろに写る一軒家は、それまで私たちが平和に暮らしていた思い出の詰まった家。音大出の母は体が弱いこともあり自宅でピアノ教室をしていたので、リビングには立派なグランドピアノがあった。

 一方父は、そのピアノを愛情たっぷりにメンテナンスする調律師。若い頃、仕事で母の実家のピアノを調律したのが縁で、親しくなったそうだ。

 やがてふたりが結婚し生まれた私たち姉弟の名も、両親が大好きな音楽が由来。

 残念ながら私も弓弦もピアノに興味がなく上達もしなかったけれど、母が弾くピアノは好きだった。

 学校から帰ってきて、歌うように滑らかなピアノの音が聞こえてくると、安心する。

 父にもその話をしたら、『お父さんもだよ』と言って笑っていた。

 村雨家はそういう温かい家だった。――なのに。

< 10 / 211 >

この作品をシェア

pagetop