冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「ああ。同僚がこれから上司と飲みに行くらしくて、一緒にどうかと誘われたんだ。今から東京に駆けつけるわけにもいかないし、そうでなくても琴里との約束の方が大事だから断った」
言葉と共にスッと伸びてきた彼の手が、顔の横に垂れる私の髪を耳にかけ、慈しむように頬を撫でる。
こういうスキンシップが少し前までは恥ずかしくてたまらなかったものの、そのくすぐったさと心地よさを、今では素直に受け入れている。もちろん。ドキドキするのは変わらないけれど。
「でも、検事正……って、すごく偉い人なんじゃないですか? 後で怒られませんか?」
「怒られたらきみに慰めてもらうよ」
「そういう話じゃないんですけど……」
「とにかく、俺はどこにも行かないから、早く風呂に入っておいで。モタモタしてると待ちきれなくなった俺が乱入するかもしれないぞ」
涼しい顔でとんでもないことを言い出す神馬さん。私の入浴中に裸の彼が露天風呂にやってくる妄想が浮かびかけ、それを消し去るように頭を左右に振る。
「い、今すぐ行ってきます……!」
「ああ。慌てて足を滑らせるなよ」
彼がクスクス笑う声を背中に受けつつ、デッキに面した脱衣スペースに逃げ込む。
ドアの鍵を閉めようとしたけれどそんなものはなく、その場で裸になることに若干の抵抗を覚えながらも浴槽のあるデッキへ出た。
シャワーもシャンプー類も常備され、至れり尽くせりだ。
でも本当に、乱入してこないよね……?
チラチラと出入り口を振り返り落ち着かない状態で髪と身体を洗うと、丸い浴槽に体を沈める。その時だけは恥ずかしさを忘れ、お湯の温かさと心地よさにはぁっと至福の息をついた。