冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 結局彼は私が入浴を終えるまで部屋で待っていてくれた。

 凛々しい顔で座椅子に座りテレビを睨みつけていたので「次どうぞ」と声を掛けたら、一度チラッとこちらを見てから、もう一度まじまじと見つめてくる。

「あ、あの……なにか変ですか?」

 左前と右前を間違えてるとか……?

 そう思って自分の浴衣を見下ろしたけれど、ちゃんと正しく着られている。

 ぽかんとしていると立ち上がった彼が近づいてきて、耳のそばまで身を屈めた。

「きみの浴衣姿が綺麗だと思っただけだ。風流で艶めかしい」
「な、なまめ……っ?」

 そんなこと初めて言われたけれど、ただ綺麗っていうより、色っぽいって意味だよね……?

 お風呂を覗かれるのは困ると思ったけれど、浴衣姿をそんな風に思ってもらえるのは不思議と悪い気がしない。

「ありがとうございます。嘘でも、うれしいです」
「だから、いちいちそういうことを言うな。きみは俺の婚約者で、世界で一番魅力的で、誰にも渡したくない相手だ。……いい加減にわかれ」

 少し不機嫌さを滲ませた彼はそう言うや否や、身を屈めて不意打ちのキスを私の唇に落とした。

 私は驚きで目を閉じることもできず、初めて重なるやわらかい感触と彼のぬくもりが幸せすぎて、胸が詰まったように苦しい。

 いつだって彼の演技の方が一枚上手で、私は心から愛されているんじゃないかって、錯覚しそうになってしまう。

 ……本当は、違うのに。

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