冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
気付くのが遅すぎる自分の無能さを恨みたくもなったけれど、だからって彼のそばを離れようとは思えなかった。
スパイの真似事を続けるつもりはなく、お金の恩があるからと、偽装婚約者の役目をまっとうしようとしているわけでもないのに。
私が私の意思で、神馬さんのそばにいたいのだ。本当に憎い相手なら、そんなこと思うはずがない。
私は彼を見つめて、静かに首を左右に振った。
「憎かったら、デートのお願いなんてしません……」
あの時、私は検事としての彼を信用したいから、と言うもっともらしい理屈をこねて、彼が断わりにくい状況を作った。
でも本当は、こうしてただ一緒にいたかっただけ。
「神馬さんのこと、もっと知りたいです……」
こんなに近くで見つめ合い、たくさん唇を重ねたというのに、まだ足りないという気持ちだった。彼の瞳が危うい熱を孕んで、私の胸を焦がす。
「きみはどうしてそう俺を煽るのがうまいんだ?」
「えっ……?」
「まぁいい。知りたいと言うなら教えてやる。ベッドの上でたっぷりとな」
吐息交じりの声で囁かれ、ドキンと大きく心臓が跳ねた。身を屈めた彼が素早く私を抱き上げ、ベッドが並んだスペースへと大股で歩いていく。
これから起こることを想像すると、期待と緊張とで胸が苦しい。でも、不思議と逃げたくはなかった。
ベッドに下ろされ、仰向けになった私の上に神馬さんが覆いかぶさる。
普段は知的でクールな印象の美しい顔が、今は野性的で荒々しい色気を纏っていた。