冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
『私は神馬鏡太郎をよく知る者だ。あの男がお前を婚約者に選んだ理由を知っている』
「えっ……?」
鏡太郎さんが、私を選んだ理由……。
お見合いを断るのに偽の婚約者が必要だったのと、父の事件を調べたいと思っていた彼のそばにたまたま私がいたから、情報を得ようとして――自分の想像を改めて組み立て、思わず落ち込みそうになる。
でも、今はそんなこと考えている場合じゃない。
黙りこくる私を心配したのか、鏡太郎さんがそばまでやってくる。思わず頼りない瞳を彼に向けると、またボイスチェンジャーの声が聞こえた。
『――村雨奏二の裁判を裏で操っていたのは神馬鏡太郎だ』
……そんな。だって、事件当時彼は東京にいなかったはずでしょう?
正体不明の人物がなにを言おうと鵜呑みにしてはいけないと思うものの、衝撃的な発言に動揺が隠せない。
『あの男のそばにいれば、お前も弟も必ずまた不幸のどん底に落とされる。婚約者の真似事はさっさとやめて、神馬鏡太郎とは絶縁することをお勧めする』
「待ってください、あなたは――」
尋ねかけたところで、通話が一方的に切られてしまう。なにも言わなくなったスマホを見つめ、必死で混乱を落ち着かせる。
今のはいったい……。
呆然としていると、鏡太郎さんが気づかわしげに顔を覗いてくる。
「琴里、真っ青だぞ。大丈夫か? やっぱり弓弦くんになにか?」
「い、いえ。……すごく一方的な間違い電話だったんです。私にはわからないことを色々言われたので、びっくりしちゃって。切る時も予告なくプツッと。まったく失礼ですよね」
あはは、と笑ってみせると、鏡太郎さんも少しホッとしたのか苦笑する。